photos:tamami tsukui
自分が触れているものがどこで生まれ、どのようにしてここへ来たのか。
根源に触れたくて山の暮らしをはじめた。
廃材で家を作り、川の上流から水を引き、山から薪を頂き、火をおこす。
食事のための草摘みをしたり、マムシなど危険な生き物とも出会う。
そんな日々の中、ふと古の営みが自分のうちに現れる瞬間がある。
ものに溢れ、大地との繋がりが薄くなったことで失った生き物としての感覚。
けれどまだ身体の奥には古からの記憶が残っている。
それは植物を通し感じることが多く、まるで植物に呼びかけられているようだ。
見えている風景の奥に何層にも積み重なっている自然と人間の営み。
今、振り返らないと失われてしまうかもしれない。
土や灰、煤、柿渋を油彩と合わせ、あしもとの植物を描くことを通し、
大地や水の呼吸、時空の巡りをテーマに、その風景に隠れているものを探り続けている。
古の洞窟や墓に描かれたものへ想いを重ねながら。